志布志貨物株式会社代表取締役
吉村望和(10期)
親の背中を追い経営の道へ
高校時代に始めた空手は大学に進学してからも続け、人生において最も大きな財産の一つです。競技としての面白さに惹かれると同時に、礼儀作法や姿勢を学び、それが今の自分の生き方にも繋がっていると思います。
漠然と「経営者になりたい」という思いがあり、大学は東京経済大学の経営学部経営学科に進学しました。経営者である親の影響が大きかったのだと思います。志布志という町から国分へと出て、高校生活を送った経験が、大学で東京に出たときに役立ちました。新しい環境でもすぐに友人を作ることができたのも、高校時代に培った適応力が大きかったのかもしれません。
大学を卒業後はUターンして家業を継ぐ決断をしました。家業は物流業で、運送業、倉庫業、通関業を手掛けています。東京で学んだ広い視野は、全国規模で展開する物流業を捉えるうえで大いに役立ちました。
帰郷した頃は、バブル崩壊後の不景気やリーマンショックによる原油高の影響を受け、会社の経営は相当落ち込んでいました。そこから父と共に10年かけて立て直しを図りました。
この厳しい時期に支えとなったのは、高校時代の仲間たちの存在です。寮で共に過ごした友人たちがそれぞれの分野で努力する姿を見て、「自分も頑張らなければ」と奮い立たされました。24歳から30代前半の10年間は試練の連続でしたが、結婚し子どもにも恵まれ、一つひとつの仕事を誠実に重ねる中で、少しずつ道が開けていきました。
地域と社会の課題を物流で解決する
2018年9月、父から代表権を引き継ぎ、4代目社長に就任しました。現在は社会問題となっている物流危機や人手不足と向き合い、運送業界の地位向上を目指しています。トラック業界は「長時間労働・低賃金」と言われ、他業種と比べて労働時間は約2割長く、賃金は2割低いという課題があります。この状況を改善するため、会社経営は「社員と共に成長する」ことを大切にしています。利益は社員に還元し、給与や待遇、福利厚生の改善に力を入れています。その結果、社員のモチベーションが高まり、それが業績向上に直結しました。自分が帰郷した頃と比べて、売上は約2.5倍に伸びています。
また、地域貢献にも取り組んでいます。大学卒業後に勤めたフィットネスジムでの経験から、「志布志に健康づくりの場を作りたい」と考え続けてきました。地域住民の健康増進と社員の健康維持を目的に、フィットネスジムを開設しました。
さらに、2026年度からは実業団空手道部も立ち上げる予定です。「その活躍が地域住民の生きがいとなりQOL向上に寄与する」を理念とし、「働きながら稽古に打ち込める環境」を創出し、競技引退後のキャリア形成をサポートすることで「一流の空手家から、一流の社会人」を育成することを目的としました。
自分が生まれた志布志と育ててくれた空手を通して、様々な社会課題の解決に自分のできるところから取り組んでいきたいと思っています。
選んだ道を正解に
「人生は選んだ道を正解にしていくことだと思います。チャレンジに失敗はなく、それを糧に正解へと変えていく努力こそが大切だと思います。ぜひ色んなことに挑戦してください。」

