理系の学問に特に役立っている国語力 衛藤倫太郎(29期)

早稲田大学大学院先進理工学研究科物理学及応用物理学専攻
博士課程 衛藤倫太郎(29期)


幼い頃から算数の難しい問題を解くことが好きだったことや、国分の空手道場に通っていたこともあり、勉強と空手を高いレベルで両立できる環境の鹿児島第一中・高に入学しました。特に、東大数学科出身で担任の重満先生による数学の授業、副担任の川田先生による物理の授業は楽しく刺激的なもので、大学で理論物理学を専攻するに至った大きなきっかけにもなりました。また、部活動に関しても空手道部顧問の福岡先生や仲間たちと短い活動時間の中で試行錯誤し、全中・インターハイに出場することができました。

 高校を卒業する頃には、特に量子力学に興味を持ち、深く勉強できる大学・学部を担任の重満先生と探し、早稲田大学先進理工学部応用物理学科に進学しました。

 学部を卒業後、大学院修士課程に進学し、身の回りの物質中の磁性についての研究を始めました。現在はこの磁性と密接に関わる「スピントロニクス」と呼ばれる分野の理論研究をしています。これは、物質中の電子が持つ電気的な性質に立脚し、高度に情報化された現代社会を支える「半導体」や「液晶」などの電子部品の基盤技術である「エレクトロニクス」を、電子が持つもう一つの側面である磁気(=スピン)的な性質を用いて置き換えることで、よりエネルギーロスが少なく持続可能な情報通信社会を目指す研究分野です。

 2023年には、私が執筆した「スキルミオン」に関する理論研究が、アメリカ物理学会の速報誌に掲載されて高い評価を受け、早稲田大学において最も名誉ある学生褒賞である「小野梓記念賞」を受賞しました。現在は同大博士課程に在籍するとともに、ドイツ・マインツ大学の研究者に弟子入りし、日本とドイツを行き来しながら研究活動に邁進しています。

 競争の熾烈な学術研究の世界に身を置き、新しい知識や発見を体系化していく中で特に重要だと感じるのは、意外かもしれませんが、高校時代に村木先生・今隈先生のお二人にみっちり鍛えていただいた国語(現代文・古文漢文)の授業です。学術研究において、文章の執筆は生命線です。論文や解説記事・研究予算の申請書といった非常に長い文章を、日本語のみならず英語でも執筆する必要があります。「本質」がシャープに明示され、読み手を引き付け、論点が明確な議論を構築するうえで、第一高校時代の国語の授業での「地味で基本的だがレベルの高い」読み書きの訓練が、直に役立っていると感じています。

 このように第一で学んだことは、今の自分にとってもかけがえのない財産です。後輩たちにも同じような体験を通して心から楽しいと思えるものに出会い、それに向かって突き進んでほしいと思います。